小さな幸福が実はとても大きなことでかけがえのないことであったりします。忙しい日々の中で、色々な事を考えて悩んで皆が生きていきます。その原動力は何かを愛すること。そんな想いを感じて頂けたら嬉しいです。

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そういうことじゃないよ 2011-09-27

君は囁くように小さな声で僕に言った。

「また一人になるのが怖かった」と。

きっと、またいつか一人になってしまうのではないかという不安を消し去ることは難しいことで、それを忘れさせるということもまた困難なことだったのだ。僕にそれが出来るだろうか。いつか、僕はこんな新鮮な君への気持ちを忘れてしまうのではないかと不安だった。

僕には自信がなかったのだ。君を好きだと言い続ける確信を持てずにいたのだ。そんな僕の気持ちに気づいたのか、不安そうに僕を見つめ精一杯のくちづけで僕の気持ちを確かめようとした。

そのくちづけを僕は素直に受け入れることが出来ただろうか。

そのくちづけに僕は永遠を感じることが出来たであろうか。

そして君の不安はそれで和らいだのだろうか。

何もかもが君と僕とのことで、その間には何かが入り込む余地はなかった。けれども、僕はどこまで君を想っていて、君の気持ちに応えられるのであろうか。僕はいつも不安で不安でしかったなかった。君を失うことも含めて考えられる全ての否定的な考えが怖くて仕方なかった。

君は言った。

「ねえ、あたしは怖いんだ。また一人になってしまうことが怖いんだ。家に帰って来ても、誰もいなくて、夜眠るときも一人で、夜の闇に押し
つぶされてこのままいなくなってしまうのではないかという気持ちになるのが怖いんだ。あなたがそこに居てくれるだけあたしは救われるんだ。でも、そんな不安とかより、あなたを失ってしまうのではないかという不安のほうが今ではもっと大きくて怖いの。あなたを失ってしまった日の夜から、あたしはどうしたらいいの。二つの絶望と恐怖と戦わなくてはいけないの。そんなの嫌だよ。あたしは、もう一人は嫌だよ。」

僕はそんな君の願いにどこまで応えることが出来るだろうか。僕は本当にそのように生きていけるだろうか。君と二人で永遠を見つめて人生を歩んでいけるだろうか。それが不安だった。君を泣かせることも、君を怖がらせることも全てが不安だった。

僕はどうしてこんなに弱いのだろうか。君を悲しませてしまうほど弱いのだろうか。僕は自分が情けなくて、非力でそして何も出来ない男なのだと感じてしまう。でも、そんなことでは君と一緒に居ることは出来ないから僕はかなり無理をして、そして強がっていた。いつも君の前では笑うようにしていたし、いつも君が泣き出さないようにと気を使っていた。

しかし、そんな苦痛を伴う努力なんてすぐに壊れてしまうもので、無理をしていることを君はとっくにお見通しだった。

「ねえ、あたしの為にそこまでするの。ねえ、あたし一人は怖いけど、あなたが苦しそうにしている姿も嫌だよ。ねえ、そういうことじゃないんだよ。二人でいたいって、ずっと一緒にいたいってそういうことじゃないんだよ。きっとね辛いこともあるし、これから二人で喧嘩したりすると思うけど、でもね嬉しいことも辛いことも二人で分け合って生きて生きたいって意味なんだよ。ねえ、そんなに無理して一人で抱え込まないで。お願いだから、あたしのことも信頼して欲しいんだ。あたしは、弱いしすぐに泣いてしまうし、俯いてばかりだけれど、でもねあなたと二人なら辛くても大丈夫だよ。だから辛いことを一人で抱え込まないで。お願いだから、ねえ。あたしを信用して。」

君の方が僕より何倍も強い人なのだと言う事をこの時に理解した。君には何もかもお見通しで、僕が君のことを守るつもりが、心配をかけないつもりが、全て見透かされていて余計に心配させていたことに僕はひどく後悔した。そして、今まで心に溜め込んできたものが一気にせきを切ったように心の底から溢れ出して僕は嗚咽を漏らして泣いた。そんな僕の頭を君は胸に抱き寄せ、ただただ僕の頭をなでてくれた。まるで子どもをあやすように、ずっと、ずっとそうしてくれていた。

君の優しさはこの世界でどこの誰よりも深くて、そして暖かいものだと思った。君は僕の大切な人で、僕も君の大切な人になりたいと思った。今より、もっと君に大切に思ってもらえるようになりたいと思った。
でも、一人で何かを抱え込むのではなく、嬉しいことも、辛いことも二人で分け合っていけるような関係になっていこうと思った。それは、君への信頼の証で、また愛情の証でもある。

君が僕に注いでくれる深海よりも深い深い愛情のように、僕もまた君へ深い深い愛情と信頼を見せようと思った。これから、僕たち二人にどんなことが起こるのかは全くわからないけれど、とにかく僕は君という人と一緒にいようと思った。どんな辛いことがあっても君と二人でいれば大丈夫だということが僕は理解できたから。

そして君を心の底から信頼しているか。だからこそ、大丈夫なんだ。きっと、僕は君をずっと好きだし、これからも君を信頼し続けるだろう。僕の弱い部分を見捨てずに受け入れてくれた君、僕の足りない部分を埋めようとしてくれた君。君という全てが僕にとってかけがえのないものなのだ。

僕はどうしてあんなに自信がなかったのだろうか。こんなに僕を理解してくれる人がいて、その人をずっと好きで居られるかなんて下らない心配をどうしてしてしまったのだろうか。僕は君が好きに決まっている。このまま永遠に、君を好きに決まっている。そんな当たり前のことも確信できないほどに僕は何を恐れていたのだろうか。

勇気と確信を愛情を持って君に言おう。

「君が好きです。これからも、ずっと先の未来でも、君の事を愛しています。僕は君が居れば、優しい気持ちになれるし、きっとこの先も穏やかに生きていけます。君が傍にいてくれれば、何も怖いものなんてない。君を愛しています。心から」

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